私たちの体の中の腸内細菌
腸内細菌は、私たちが食べた食物や消化管から出る分泌物を栄養源にして生育し、同時に大量の物質を作り出しています。
人間の胃・腸管内に1,000種以上100兆個(重さにして1~1.5kg)もの細菌が生きています。
この物質は消化管を通して人間の体内に取り込まれ、人間の生命活動に大きな影響を与えています。
母親の胎内にいる時はバクテリアが1個もいない無菌状態ですが、生まれ落ちたその瞬間から体の表面には皮膚常在菌、体の中の器官すべてに腸内細菌が住み着き始め一生を共にします。
1885年、フランスの科学者ルイ・パストゥールは、『人間の体内に生息している細菌は、我々の生存にとって必要なものであり、これなくして生命の維持は困難である。』という考えを示しました。
腸内細菌有用論は、歴史的にこの時から始まったと言われています。
ロイテリ菌(乳酸菌の一種)に虫歯予防効果
広島大学歯学部附属病院の二川浩樹講師のグループが,乳酸菌の一種「ロイテリ菌」に虫歯菌(ストレプトコッカスミュータンス)の発育を阻止し,殺菌効果があることを突き止めました。
これは,産学一体の研究として,全国で唯一,ロイテリ菌入りのヨーグルトを製造しているチチヤス乳業と二川浩樹講師のグループと2年前から研究を行った結果として,6月30日広島国際会議場で開催された第13回老年歯科医学会,市民フォーラムで公表したものです。
ロイテリ菌は,腸内細菌を成長させ,病原性大腸菌O157などの殺菌効果のあることが知られています。二川講師のグループの実験によると,ロイテリ菌と虫歯菌を3対1で混ぜ,試験管で培養すると,虫歯菌の約90%は発育が抑制されました。
培養した虫歯菌に,ロイテリ菌入りヨーグルトと,その他の乳酸菌入りヨーグルト20種類を,それぞれ付着させた場合,ロイテリ菌入りヨーグルトのみに虫歯菌の繁殖を阻止する効果が認められました。
さらに,歯学部附属衛生士学校の学生40名の協力を得て実験を行いました。
実験では,ロイテリ菌入りヨーグルトと加熱処理により乳酸菌を殺したヨーグルトを,一組20名の学生グループに,1日1回2週間試食してもらい,唾液中の虫歯菌の量を測定しました。
さらに,グループを入れ替えて2週間試食後,唾液中の虫歯菌の量を測定しました。
その結果,ロイテリ菌入りヨーグルトを食べたグループでは,唾液中の虫歯菌の量が約3分の1から5分の1に減少しました。
ロイテリ菌ヨーグルトを食べるのをやめて2週間たっても,なお虫歯菌の量は2分の1から4分の1に減少したままで,残存効果も期待できます。
二川講師は「ロイテリ菌の虫歯菌減少効果は,通常の歯ブラシを行っても失われることはないので,食後は,きちんと歯磨きを行ってください。」と話しています。
(報道への提供資料)
○チチヤスのロイテリ菌ヨーグルトに虫歯菌であるストレプトコッカスミュータンスに対する発育阻止効果がある(PDFファイル:104KB)
○実験結果(PDFファイル:208KB)
【資料提供及びこの記事に関するお問い合わせ先】
広島大学歯学部附属病院
義歯インプラント科講師 二川浩樹(にかわ ひろき)
電話:(082)257-5681